遠い、遠い昔の物語ー

とある国を統べる歌姫、エレン・リンドール。
彼女の心は厚い雲の様な憂いを抱いていた。
歌姫を守護する騎士の一人であるイシル・ルインが彼女に接する事を避けるようになったのだ。
姿を現さないイシルに対し、もう一人の騎士、アノール・カランは疑問を抱き、イシルを問いつめる。
固く口を閉ざすイシルは大きな秘密を抱え、人知れずとある計画を進めていた。

交錯する思いは深く暗い闇をまとい、彼らの道を迷わせる。
空を守護する太陽と月の光は、覆い尽くした黒い影を裂く事はできるのか。

世界観

舞台は空を神と崇めて来たとある国。
空への祈りは歌で捧げられ、その歌を継いで来たのが王家の一族から選出される歌姫たちである。
百余年も前のこと、天災が襲い滅びかけた国を救ったのが王家の祖となる少女であった。
少女が歌った途端、風は止み、空が晴れ、暖かな光が差し込んだのだ。
彼女は術を操る力があったと言われている。
世界的に魔術の類いは一部の者が扱えるがあまり一般的ではなく、術者は好奇の目に晒される事が多いが、
当時は藁にも縋る様な思いもあり、彼女がそのまま指導者として据えられ現在に至る。
先述したように術者は稀な存在であるため代々の歌姫全員が術者であった訳ではない。
そのため歌の歌詞字体に術となる言葉が使われている。これは初代が作ったものとされる。

この国では"魔障"と呼ばれるモノが発生するようになり、突発的に犯罪に走ったり、
突如特異な行動を起こした者は"魔障に犯された"、"魔に刺された"などと言われる。
原因や正体は解明されていない。
そのため歌姫の歌、そして空から降り注ぐ光は魔障の穢れを祓うといわれており、
逆に光の射さない夜は穢れが溜まり、魔障が一番活発になるとされている。

他国では歌姫を魔女と呼ぶ者達もいれば、天候を操れる魔術師と呼ぶ者もいる。
その力を滅ぼすため、奪うため、理由は様々であるが歌姫は命を狙われる様になった。
歌姫を人の力、そして魔障の穢れから守るため、朝夕彼女を守護する騎士が誕生した。
太陽の騎士は昼の空を守護し、主に武力で人の手から歌姫を守るために。
月の騎士は夜の空を守護し、主に呪術で見えざる者から歌姫を守るために。
そうして長い間その国は今まで続いて来た、歴史には刻まれている。